大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎地方裁判所 昭和62年(ワ)391号 判決

(抄録)

「二 抗弁について

1 前記各事実及び<証拠>を総合すると、以下の事実が認められる。

(一) Nは、Yら夫婦の女婿であり、中古車の販売店を営んでいたが、昭和六一年一〇月初め頃、Yらに対して、車を購入するようにすすめた。

(二) Y1は、女婿の頼みでもあり、Nから中古車を購入することを決め、同月一二日、Nが持参してきたXとの間のオートローン契約書に署名捺印し、Y2も連帯保証人として同様に署名捺印し、Nに渡した。

(三) その後、数日してから、XからYらに契約意思確認の電話があり、Yらはこれにまちがいない旨を答えた。

(四) ところが、同月二三日頃になって、YらはNから、オリエントファイナンスでは、昭和六一年一一月一日以降は値段が一五〇万円以上の車については車検証の写しがないと契約できなくなったので、Xとの契約はキャンセルした旨を告げられた。そして、そのかわりに、同業者のAの車をK信販を使って買ってもらいたいと頼まれた。

(五) そこで、Yらは、特に不審にも思わず右申出を承諾し、新しい契約のためにNに印鑑を預けた。

(六) その後、同月二五日以後、KからY1に対して契約意思の確認の電話があり、Y1はこれに承諾の返事をしたが、その後、義理の息子のBから、Nが二重にクレジット契約を締結したため被害を受けた旨の話をきいて不安になり、また、関係のないAから車を購入する必要もないと考え直して、Kに対しクーリングオフの手続をとり、後の契約を解消した。

(七) Nは、その後間もなく倒産し、Yらに対して、本件車両の引渡しはなされていない。

2 これに対し、<証拠>中には、YらがNとの間で、Nの事業の運転資金とするために、了解の上で架空の自動車売買契約を締結した旨の記載があるが、<証拠>に照らして採用し難く、他に、前記認定事実を履えすに足りる証拠はない。

3 ところで、割賦販売法三〇条の四は、本来は別個の契約である売買契約上の抗弁事由を、立替払契約においても支払拒絶という形で割賦購入あっせん業者に対して対抗し得ることを認めているが、その抗弁事由の類型については、これを特に限定していない。

しかしながら、右のような抗弁の対抗を認める実質上の理由を考えるならば、割賦購入あっせん業者が購入者に対して自己の加盟店たる販売店をあっせんしたということの責任とかかわりなく、購入者の側で自ら作出した一方的な事由に基づく抗弁、例えば購入者と販売店間の通謀虚偽表示や、購入者と販売店間の売買契約の合意解約等は、右法条のいう抗弁事由に該当しないと解すべきである。

そこで、本件の場合についてこれをみるに、前記認定事実によると、NとYらとの間においては、本件車の売買契約は一応合意のうえ解約されていると解されるのであるが、右解約は、完全にNすなわち販売店側の申込みによってなされたものであり、YらはNの言を信じで単純にこれに応じたものにすぎないのであるから、その実質においては、販売店側の契約不履行の場合と異ならず、売買目的の自動車の引渡しがなされていないことが購入者の側で自ら作出した事由に基づくものであるとは解されない。

そうすると、Yらは、前記法条に基づき、以上の事実関係の下で販売店に対し売買代金支払の義務を負担しないことをもって、Xに対しても対抗し得るものと解するのが相当である。」

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!